共同研究の背景と目的
日本事務器株式会社(NJC)、国立大学法人 東京大学 大学院農学生命科学研究科 農業・資源経済学専攻、および沼津中央青果株式会社は、2024年9月より卸売市場取引のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する共同研究を進めてきました。この研究は、農家と市場・青果流通事業者を情報でつなぐ業務改善アプリ「fudoloop」の導入が、卸売市場にもたらす影響を検証することを目的としています。
第1期共同研究の成果:価格と出荷量の向上を確認
第1期研究は、2024年9月1日から2026年3月31日の期間で実施されました。この研究では、fudoloopの活用が個々の出荷者の取引価格および出荷量に与える影響を定量的に把握することを目指しました。
沼津中央青果の「ほうれん草」と「いちご」の取引履歴データを用いて、fudoloop利用生産者と非利用生産者を比較分析した結果、利用者は非利用者と比較して平均価格・出荷量が高まる傾向が確認されました。具体的には、ほうれん草では出荷量の増加と価格変動の縮小(安定化)が見られ、いちごでは価格水準の上昇が見られました。

この研究成果は、フードシステム研究の論文として発表されています。
出典:松本 百永・中谷 朋昭(2026)「卸売市場における情報共有のデジタル化-取引価格と出荷量に関する数量分析-」、フードシステム研究、32巻4号、pp. 265-270.
第2期共同研究の展望:経営課題への多角的検証
第1期の研究結果を踏まえ、2026年4月からは、新たに株式会社須崎青果を加えた4者体制で第2期共同研究が開始されています。この第2期では、東京大学 農業・資源経済学専攻に所属する学生と協働し、「労働コストへの影響」や「買参人群の拡大」といった、卸売市場の経営に直結する課題に対し、DXの効果を多角的に検証する予定です。
東京大学 農業・資源経済学専攻の准教授である中谷朋昭氏(現・日本大学教授)は、fudoloopの導入が価格や出荷量の上昇に貢献したと評価しつつも、安定性についてはさらなる分析が必要であるとコメントしています。第2期では、統計的因果推論の手法を用いたり、価格や出荷量以外の変量に着目した分析が期待されます。
沼津中央青果株式会社 専務取締役の丹藤松年氏は、fudoloopの手応えがデータとして実証されたことを喜び、第2期研究で「入口」から「出口」の分析にまで踏み込むことで、担当者の「勘と経験」の形式知化、業務の属人化解消、次世代への技術継承に繋がることを期待しています。
株式会社須崎青果 代表取締役社長の市川義人氏は、データの力で現場の課題を解決し、持続可能な市場運営、現場で働く人々の「疲弊しない」環境づくり、生産者の所得向上に貢献したいと述べています。
日本事務器株式会社の事業戦略本部 食産業ソリューション担当 担当部長である高松克彦氏は、fudoloopが食産業の持続可能性に貢献できる手応えを得たとし、第2期研究で得られる実証データと現場の声をプロダクトの進化につなげ、持続可能な食のサプライチェーン構築を推進していく意向を示しています。
共同検証報告会の開催
本研究の成果を詳しく報告する「検証報告会(ウェビナー)」が、2026年6月4日(木)に開催されます。全国の卸売市場の経営層や実務担当者を対象に、DXによる具体的な成果が公開される予定です。参加を希望する場合は、以下のリンクより申し込むことができます。
共同検証報告会(ウェビナー)参加申込: https://fudoloop.njc.co.jp/news/seminar_20260604/
fudoloopおよび関連企業について
-
fudoloop: 2019年に提供開始された、農家と市場・青果流通事業者を情報でつなぐ業務改善アプリです。2026年3月末時点で13,000人を超える生産者に利用されています。
-
国立大学法人 東京大学 大学院農学生命科学研究科 農業・資源経済学専攻: 農業・食料・資源・開発等に関わる国内外の諸問題を社会科学的に分析し、日本の卸売市場における仲介者の役割を研究テーマとしています。
-
沼津中央青果株式会社: 静岡県東部の地方卸売市場で、静岡県産農産物の価値向上を目指し、集荷荷受から販売まで一貫したコールドチェーンシステムを導入しています。
- URL: https://numachu.com/
-
株式会社須崎青果: 高知県西部地方卸売市場の運営を担い、高知県産農産物の安定供給と地域農業の発展に貢献しています。フードロス削減の取り組みも行っています。
-
日本事務器株式会社: 2024年に創業100周年を迎えた企業で、ヘルスケア、民間企業、文教・公共など多様な分野にICTソリューションを提供しています。



コメント