会場への問いかけと「気持ち悪いほどの均質性」
講演冒頭、英利氏はサミット会場に集まった世界各国からのエグゼクティブに対し、「ご自身の国の政治家が自分を代弁してくれていると感じるか、自分と似ていると感じる方はどのくらいいるか」と問いかけました。その結果、会場で挙がった手はほぼゼロでした。この事実は、講演全体を貫く出発点となりました。
自身が立候補を決めたきっかけについて、英利氏はニューヨークの国連事務局本部から日本の政治を見て感じた「気持ち悪いほどの均質性」を挙げました。特定の年齢層、家系、経済的背景の男性ばかりが立候補し当選し続けている状況に、「あまりにも時代遅れに見えた」と述べました。

立候補から選挙戦、そして国政へ
転機は、河野太郎衆議院議員への一本の電話でした。英利氏が「この状況に納得がいかない」と伝えたところ、河野氏の勧めにより自民党を訪ね、わずか2か月以内に立候補が決定しました。
国連の仕事を辞めて帰国後、初の国政選挙は全国比例代表として6週間の準備期間で挑むことになりました。事前には「3,000〜4,000票取れれば上等」と言われていましたが、英利氏は5万4,000票を獲得。日本では候補者名を有権者が自筆する必要があるという構造的な不利がある中で、この数字は「より多様な代表が必要だ、と意思表示してくださった」ものと語られました。

半年後には千葉5区(市川市・浦安市)の補欠選挙に擁立され、住んだことのない選挙区で9週間という短期間で信頼を回復し、僅差で初当選を果たしました。その後、翌年の総選挙での復活当選を経て、直近の選挙では8万票を超える圧勝で議席を確保。「私たちの民主主義はもっと良くなれる、30代でやってきたばかりの女性に代表されてもいい、と本気で信じてくださった」と述べました。
日本における代表性の変化と世界のトレンド
英利氏は、自身の選挙経験をより大きな構造変化の中に位置づけました。初当選時の衆議院女性比率10%から、直近では14.6%へと上昇。参議院の女性比率も約25%から約30%へと変化し、女性総理大臣も誕生したことに触れ、「日本において代表性への関心が高まっていることを示している」と分析しました。

一方で、外務大臣政務官の立場からは、国内の前進と世界全体での民主主義の後退が同時並行で進む「対照的なトレンド」を指摘。「世界では民主主義、人権、市民権、そして法の支配のための空間が、次第に狭まっている」と感じていると述べました。その上で、日本が「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを通じて、民主主義とダイバーシティの理念を掲げ続けるべきだと主張しました。
AIガバナンスと「代表性」の問題
T4IS2026のクロージング基調として、英利氏はテクノロジー、資本、社会的インパクトの交差というサミットのテーマを、代表性とダイバーシティの視点からまとめました。AIガバナンスやテクノロジーを考える上で、「代表性とダイバーシティの大切さ、より良いガバナンスの必要性、そして人権の視点をそこに組み込んでいくことの重要性」を考慮すべきだと提言しました。

日本の女性政治家が少ない3つの構造的障壁
質疑応答では、「そもそも政治家になりたいと思っている日本人女性自体が少ない」という質問に対し、英利氏は3つの構造的障壁を提示しました。
- 朝6時〜夜12時の働き方:朝の駅立ちから夜のレセプションまで続く長時間労働は、子育てや介護など家庭の責任を担う人には困難であり、「家事をしなくていい、子育てもしない、仕事以外に責任を負わない男性政治家を前提に設計されている」と指摘しました。
- ロールモデルの不在:「見えなければ、なれない」という言葉を引用し、日本の政治の世界における女性ロールモデルの欠如を挙げました。自身の存在が「自分たちのような人間にもこれは可能なんだ」というエビデンスになればと述べました。
- 資金:選挙には多額の資金が必要であるものの、資金提供者やスポンサーは依然として男性に資金を出す傾向があるため、女性にとっては立候補に必要な額を集めるのがはるかに難しい現状を指摘しました。
これらの要因が、女性だけでなく、若者や政治家家系出身ではない人々にとっても立候補のハードルになっていると総括し、最後に若い参加者に向けて「ぜひ立候補を真剣に考えてみてほしい。一人ひとりが挑戦することで、その壁を崩していける」と語りかけました。

英利アルフィヤ氏 プロフィール
英利アルフィヤ(Arfiya Eri)氏:外務大臣政務官、衆議院議員(千葉5区選出、自由民主党)。1988年福岡県北九州市生まれ。ウイグルとウズベクのルーツを持つ。ジョージタウン大学卒業後、日本銀行勤務を経て、2016年から2022年まで国連事務局本部(ニューヨーク)にて要職を歴任。2022年に政界入りし、2023年衆議院補欠選挙(千葉県第5区)にて初当選。同年、米TIME誌「TIME 100 NEXT」に選出。2024年第2次石破内閣にて外務大臣政務官に就任し、欧州、中央ユーラシア、中南米・カリブ、国際協力(ODAを含む)、グローバル課題を担当。日本語、英語、ウイグル語、ウズベク語、中国語、トルコ語、アラビア語(初級)の7言語を操ります。
関連リンク
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Tech for Impact Summit 公式サイト:https://tech4impactsummit.com/ja
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ソーシャス株式会社 コーポレートサイト:https://socious.io/ja
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英利アルフィヤ氏 クロージング基調『Democracy and Diversity』(YouTube):https://www.youtube.com/watch?v=KvykoC5cr6g



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