マクロ経済環境と家計への影響
現在の日本は、インフレ率が概ね2~4%で推移する明確なインフレ局面にあります。一方で、実質賃金は長らくマイナス圏にあり、物価の上昇が賃金の上昇を上回る状況が続いています。このため、家計の購買力は低下しており、金利上昇が加わることで「物価高」「実質所得減」「借入コスト増」という三重苦に直面していると言えます。

首都圏中古マンション価格の実態
首都圏の中古マンション成約坪単価の推移を見ると、東京都では明確な右肩上がりの傾向が続く一方で、神奈川県・埼玉県・千葉県では横ばい基調となっています。この違いは、市場参加者の構造に起因すると考えられます。東京都は投資需要と実需が混在する市場であるのに対し、神奈川・埼玉・千葉は実需中心の市場であるため、金利上昇の影響の受け方が異なると分析されています。

東京都における市場構造の変化
東京都のマンション市場では、価格帯別に明確な構造変化が確認されています。1.5億円以上の高額帯では、2024年9月前後から販売日数の増加と値下げ回数の増加が同時に発生しました。これは、売れるまでに時間がかかり、値下げをしても売れにくい状況を示しています。この時期は政策金利が0.25%に引き上げられ、調達コストが増大したことで、特にレバレッジを活用する投資層にとって厳しい環境になったと考えられます。投資マネーによって押し上げられていた価格水準に対し、実需層が追いつけなくなり、需要が減退したと見られます。
一方で、1.5億円未満のゾーンでは販売日数が短縮し、値下げ回数が減少するという真逆の現象が起きています。これは、高額帯から準高額帯へ需要がシフトしたことを意味し、高所得実需層がより価格を抑えたゾーンへ移動したことで、購入母数が増加し流動性が高まったと分析されています。金利上昇は「需要減少」ではなく、「価格帯の再編」を引き起こしたと言えるでしょう。

周辺三県でも見られるグレードダウン
神奈川県・埼玉県・千葉県でも同様の現象が確認されています。2024年7月前後を境に、2006年以降築の高価格帯物件の成約比率が低下し、築年数の古い物件の成約比率が上昇しました。価格水準自体は大きく崩れていませんが、購入対象が「築浅・高価格」から「築古・価格抑制型」へとシフトしています。ここでも需要が消滅したわけではなく、選ばれる物件が変わっただけという点が共通しています。

金利上昇が価格を下げなかった理由と今後の見通し
以上の分析を総合すると、金利上昇により高額帯や投資寄り市場が減速したものの、需要は価格を下げる方向ではなく、別の価格帯や物件タイプへ移動したという構図が浮かび上がります。結果として、政策金利の上昇はマンション価格全体の下落には直結しなかったと結論付けられています。
今後の焦点は実質賃金です。2026年は賃上げの継続により実質賃金がプラスに転じる可能性が高いと見られています。もし「実質所得の改善」と「金利上昇の吸収」が同時に進めば、住宅購入余力は回復するでしょう。その場合、金利上昇があっても「価格下落」ではなく「選別強化」へと進む可能性の方が高いと予想されます。
結論として、金利上昇が直ちにマンション市場全体の価格下落を引き起こすわけではなく、高額帯から準高額帯への需要移動、築浅から築古へのグレード調整、投資主導ゾーンの減速といった、価格帯や商品特性ごとの再編が進行していると言えます。需要は消滅せず、可処分所得と金利環境に適合するゾーンへ移動している状況です。特に注意すべきは「価格だけが先行したエリアから調整が始まる」という構造で、実需の裏付けを超えて投資資金が流入したエリアや、所得水準の上昇を上回るスピードで価格が高騰したエリア、過度な価格プレミアムが乗った物件群では、流動性の鈍化や価格調整が顕在化する可能性が高いと考えられます。
住宅ローン金利の動向(2026年1月時点)
変動金利
2026年1月の変動金利はほぼ横ばいで推移しましたが、前年同月比では明確に上昇しています。DH住宅ローン指数は0.908%と、前月の0.902%からわずかに上昇し、前年同月の0.611%と比較すると上昇水準にあります。2025年12月の日銀利上げを受け、短期プライムレート連動の変動金利には引き続き上昇圧力がかかる局面と言えます。

10年固定金利
2026年1月の10年固定金利は明確な上昇を見せました。DH住宅ローン指数は2.254%と前月の2.086%から上昇し、前年同月の1.443%と比べても大幅な上昇です。日本国債10年物利回りの上昇が背景にあり、多くの銀行で2%を超え、一部では3%台に到達しました。長期金利が市場環境をより直接的に反映するようになり、固定金利は上昇局面のただ中にあります。

全期間固定金利
2026年1月の全期間固定金利も上昇し、DH住宅ローン指数は3.063%と前月の2.868%から上昇しました。3か月連続で全金融機関が金利を引き上げており、金利上昇の勢いが最も強く表れている分野です。超長期国債利回りの上昇を背景に、フラット35を含む金融機関が金利を引き上げています。変動金利との金利差は拡大していますが、長期ゾーンの上昇圧力が強く、今後も高水準での推移が見込まれます。

分析元について
本記事の分析は福嶋総研によるものです。福嶋総研の公式ページはこちらです。
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