2026年衆院選のYouTube視聴数18億回突破:切り抜き動画が選挙戦の主戦場に
株式会社エビリーが提供するYouTubeデータ分析ツール『kamui tracker』は、2026年衆議院の解散が宣言された1月19日から2月1日までの期間における、政党関連YouTube動画の分析結果を発表しました。この調査では、投稿本数、視聴回数、エンゲージメント、コメント、政策キーワードなどが集計・分析され、短い選挙戦の中でYouTubeが有権者の関心をどのように集めたかが可視化されています。
主要な調査結果のポイント
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YouTube総視聴数は18億回を突破し、「切り抜き動画」が選挙戦の主戦場となりました。総視聴回数の約8割以上を第三者による投稿が占め、UGC(ユーザー生成コンテンツ)による拡散が現代選挙のスタンダードとなっている実態が浮き彫りになっています。
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「自民党・中道」が圧倒的なリーチを誇る一方、「維新」は公式発信で独走しました。自民党は総視聴数8億回超で首位となり、中道も5億回に迫るリーチを見せました。維新の会は公式チャンネルから期間中最多となる471本の動画を投稿し、直接発信に注力する独自戦略が鮮明になっています。
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「れいわ・参政党・共産党」の3党は、平均を凌ぐ12%超の熱狂的エンゲージメントを記録しました。これらの党は、視聴者の10人に1人がアクションを起こす「熱量の高いコミュニティ」をYouTube上に形成していることがデータから判明しています。
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コメント欄の感情分析では「日本保守」がポジティブ率68.5%で1位となりました。コメント数自体は限定的であるものの、ポジティブ率が高く、支持的意見が集中している点が特徴です。
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動画タイトルに含まれる政策キーワードは「消費税」に集中しました。1,016件と2位以下を大きく引き離してトップとなり、今回の選挙における主要争点の一つであったことが示されています。
各政党別の動画投稿本数

全政党を通じて、党公式やメディアを遥かに凌ぐ本数が「そのほか(切り抜きチャンネルや一般投稿)」から投稿されています。特に自民党は約8,000本、中道は約5,500本もの動画がYouTube上に投稿され、これらが有権者の目に触れる機会を物理的に底上げしていると考えられます。
維新の会は公式チャンネルからの投稿本数が471本と、全政党の中で最多となりました。これは平均投稿数168本の約2.8倍に及び、党独自のメッセージを高い頻度で直接発信し続ける「ダイレクト・コミュニケーション」へのこだわりがデータに表れています。
各政党別の動画視聴回数

視聴回数では、自民党が2週間で8億回再生という数字を記録し、そのうち約81%にあたる6.5億回以上が「そのほか」のチャンネルによるものです。これは、公式発信が「種」となり、SNS上のクリエイターによって増幅される現象を象徴しています。
視聴回数2位の中道(約4.9億回)は、視聴回数の約90%が「そのほか」によるものでした。投稿本数に対する視聴回数が伸びており、視聴者が関心を引くトピックが第三者の手によって流通したことが推察されます。
党公式動画の視聴回数では自民党(約1.2億回)や共産党(約3,500万回)が健闘しており、公式動画は正確な情報を確認したいコア層に届き、切り抜きなどの「そのほか」動画は政治に詳しくない層への入り口として機能するという役割分担が明確化しています。
各政党別のエンゲージメント率(熱量)

視聴回数という「広がり」の指標に対し、エンゲージメント率(エンゲージメント数÷動画の視聴回数)からは、各政党に対する支持の「深さ」が浮き彫りになっています。
党公式チャンネルにおいて、れいわ(12.61%)、参政党(12.26%)、共産党(12.31%)の3党が12%超の突出した数値を記録しました。これは、視聴者が単に動画を見るだけでなく、能動的に応援や対話に参加している「熱狂的なコミュニティ」が形成されている可能性を示しています。
総視聴回数で上位の自民党や中道は、エンゲージメント率では下位に位置しており、これは幅広い層に情報が届いている(ライト層が多い)ことの裏返しと見られます。
公式のみならず、第三者による「そのほか」の動画においても、参政党(7.32%)やれいわ(7.32%)は高いエンゲージメント率を維持しており、支持者が作成・拡散したコンテンツに対しても同様に熱量の高いファンが反応していることがうかがえます。
自民党は広告などの利用で幅広い層に情報を届けた結果、コメントといいね数は950,473件と圧倒的であるにもかかわらず、視聴がそれ以上に広がり、エンゲージメント率を押し下げる一因となっているとみられます。
コメント分析

投稿されたコメントの感情分析(AIによる判定)を実施したところ、政党ごとにYouTubeコミュニティの性質が大きく異なることが明らかになりました。
日本保守はコメント数自体は5,067件と限定的であるものの、全政党の中で唯一60%を超えるポジティブ率(68.5%)を記録しました。ネガティブ率(7.99%)も10%を切る低い水準であり、コメント欄が非常に強固で純度の高い支持層によって形成されていることがわかります。
自民党の総コメント数は125,561件にのぼり、2位の中道(58,147件)に2倍以上の差をつけて圧倒しました。ポジティブ率は42.8%ですが、中立率も39.58%と高く、単なる支持者だけでなく、批判・中立的反応が同一空間に併存・存在している実態が浮き彫りとなっています。
中道(20.14%)や社民党(25.26%)は、他党と比較してネガティブ率が高い傾向にありました。これは、既存政治への批判の受け皿となっている側面や、物議を醸すトピックに対して厳しい意見が集中しやすいYouTubeのアルゴリズム的特性も影響していると推察されます。
【トピック分析】政策キーワード

動画タイトルに含まれる政策キーワードを抽出したところ、本選挙の主要争点が「生活直結型」のトピックに偏っていることが明らかになりました。
「消費税」に関するワードが1,016件と突出しており、物価高騰が続く中、消費税が政党側から主要な争点として集中的に提示されていたことが分かります。続く「物価高対策(106件)」「社会保険料(102件)」と合わせ、経済的負担をめぐるテーマが政党発信の中心に置かれていました。
経済トピックに次いで、「外交(231件)」「安全保障(138件)」「スパイ防止(79件)」といったキーワードが上位にランクインしました。不安定な国際情勢を背景に、国の守りや対外戦略についても、YouTubeを通じて政党側の発信テーマとして一定の比重を占めていたことが分かります。
まとめ
今回の2026年衆院選のデータ分析から、YouTubeが「政治への不信をぶつける場」から「生活に直結する政策を論じる場」へと進化したことが明らかになりました。特定の支持層によるコミュニティ形成や、政策トピックへの高い関心は、選挙戦が従来の「マスメディアによる一方通行の報道」から、プラットフォーム上の「多角的な相互作用」へと完全にシフトしたことを物語っています。
調査概要
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調査対象期間: 2026年1月19日(解散宣言日)~2月1日
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対象チャンネル: 動画タイトルに特定キーワードを含む動画を投稿しており、『kamui tracker』に登録があるチャンネル(全1,563チャンネル)
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対象動画: 調査対象期間に、対象チャンネルから投稿された政治関連動画(全23,977本)
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カテゴリの定義:
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党公式: 党が公式で出しているチャンネル(代表個人も含む)
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メディア: 放送局や主要YouTubeメディア
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そのほか: 個人クリエイターや候補者、応援チャンネルや切り抜きチャンネル等
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YouTubeデータ分析ツール「kamui tracker」について
「kamui tracker」は、国内最大級のYouTubeデータを保有するデータ分析ツールです。チャンネルや動画の視聴回数、登録者数、エンゲージメント率などの基本的な指標はもちろん、競合チャンネルの動向分析、トレンドとなっている動画の把握、効果的なタイアップクリエイターの選定など、YouTubeのチャンネル運用に必要なデータを網羅的に提供します。
これらの機能により、データに基づいた客観的な意思決定を可能にし、チャンネルの成長を加速させます。
サービスサイト: https://kamuitracker.com/
詳細ページ: https://kamuitracker.com/about




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