アメリカの内側で起きていること
著者たちはまず、現代アメリカが直面している深刻な分断に焦点を当てています。政治的な対立が激化し、メディアは偏向し、教育現場では特定のイデオロギーが浸透しているとのこと。さらに、軍や歴史認識にまで価値観の揺らぎが及んでおり、これらは単なる社会問題ではなく、「国家の統合そのものを揺るがす構造的危機」であると指摘されています。
特に注目すべきは、アメリカの歴史的象徴である南北戦争やリンカーン像をめぐる再評価です。これまで“正義の物語”として語られてきた歴史が、現代の価値観によって書き換えられつつある現状を通して、アメリカが「自らのアイデンティティを見失いつつある」姿が浮き彫りにされています。
また、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)が社会の自由な議論を制限し、国家の活力を奪っている現実にも踏み込んでいます。こうした動きは軍や外交政策にも影響を与え、結果としてアメリカの国際的な影響力低下につながっていると分析されています。
日本に眠る「再生の可能性」
しかし、この本は単なるアメリカ批判で終わりません。むしろ中心となるのは、「これからの世界でどの国が希望を担うのか」という問いです。その答えとして提示されているのが、日本です。
日本は、長い歴史の中で培ってきた共同体意識、自然と共存する価値観、そして農業や漁業をはじめとする持続可能な社会構造を持っています。著者たちは、これらがグローバル資本主義が行き詰まりを見せ始めた現代において、非常に重要な意味を持つと評価しています。
また、日本は地政学的にも重要な位置にありながら、戦後の体制の制約の中で独自の外交・安全保障戦略を十分に発揮できていない現実があります。本書では、日本が真に自立した国家として国際社会に貢献するための方向性についても提言がなされています。
世界へ発信する日英二言語構成
この本のもう一つの特徴は、日英二言語で構成されている点です。これは、日本国内だけでなく、世界に向けて「日本の価値」を発信しようとする意図が込められており、国際的な読者にも直接メッセージが届くように設計されています。
書籍情報
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書名:2人のアメリカ人が語る 絶望のアメリカ、希望のニッポン
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著者:マックス・フォン・シュラー/ジェイソン・モーガン
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仕様:四六判並製・256ページ
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ISBN:978-4-8024-0258-3
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発売:2026.04.21
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本体:1600円(税別)
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発行:ハート出版
著者紹介
マックス・フォン・シュラー(Max von Schuler)
元海兵隊で歴史研究家。ドイツ系アメリカ人。1974年に岩国基地へ米軍海兵隊として来日し、その後、日本や韓国で活動。退役後は国際基督教大学、警備会社を経て、役者やナレーターとして日本で活動しています。YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも情報発信中です。著書に『[普及版]アメリカ人が語る アメリカが隠しておきたい日本の歴史』など多数あります。
ジェイソン・モーガン(Jason Morgan)
麗澤大学准教授で歴史学者、日本史研究者。1977年アメリカ合衆国ルイジアナ州生まれ。テネシー大学チャタヌーガ校で歴史学を専攻後、名古屋外国語大学、名古屋大学大学院、中国昆明市の雲南大学に留学。その後、ハワイ大学大学院で中国史を専門に研究し、フルブライト研究者として早稲田大学大学院法務研究科で研究したのち、ウィスコンシン大学で博士号を取得。著書に『バチカンの狂気』など多数あります。



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