高品質データ取得の重要性
AIロボットの学習において、ハードウェアの分断やデータ品質の低さは大きな課題とされてきました。多くの学習データは研究用ロボットで取得され、視覚情報のみに依存しているため、繊細な作業や接触を伴う作業の再現が困難でした。
「UR AI Trainer」は、UR独自のダイレクトトルク制御と力覚フィードバックを活用することで、ロボットが物理的に対象物とどのように相互作用するかを開発者が直接制御できるとされています。これにより、10万台以上の導入実績を持つハードウェアを活用して、そのままAI学習を行うことが可能になります。
Scale AIとの連携によるデータ活用加速
「UR AI Trainer」は、作業者がロボットを直接操作しながら教示を行う「リーダー・フォロワー構成」を採用しています。作業者が「リーダー」ロボットを操作すると、「フォロワー」ロボットがその動きをリアルタイムで再現し、この過程で動作、力、画像といったマルチモーダルデータが同期して記録され、Vision-Language-Action(VLA)モデルの学習に必要な構造化データが生成されます。
本システムはUR AI Acceleratorプラットフォーム上で動作し、Scale AIのソフトウェアと統合されています。これにより、生産現場のロボットから大規模かつ継続的にデータを収集し、AIモデルの改善を加速させるフィードバックループの構築が実現します。
Scale AIのPhysical AI部門ゼネラルマネージャーであるBen Levin氏は、ユニバーサルロボットのグローバルな導入基盤がデータ収集とAI展開の理想的な基盤であるとし、今回の協業によりAIモデルの学習、導入、改善を高速に回す統合的なデータ基盤が実現したと述べています。両社は本協業の一環として、URロボットで収集した大規模な産業用データセットを年内に公開する予定です。
GTCでの実機体験とデータ再現
GTC会場のURブースでは、来場者が「UR AI Trainer」を実際に体験できました。2台のUR3eを「リーダー」として操作し、触覚フィードバックを入力として2台のUR7e「フォロワー」を制御し、スマートフォンのパッケージング作業を実行しながら、模倣学習およびVLA学習用のデータ取得を体験できました。取得されたデータはScale AIのプラットフォーム上にリアルタイムで記録され、AI Trainer上で再生(リプレイ)も可能でした。
AIモデルのトレーニングデータ取得プロセスは、仮想環境でも紹介されました。NVIDIA OmniverseおよびIsaac Sim上に構築された環境では、2台のHaply Inverse3デバイスを用いて双腕のUR3eシステムを操作し、物理挙動を忠実に再現したシミュレーションを体験できました。

URは、NVIDIAのPhysical AI Data Factory Blueprintの活用も検討しており、合成データ生成の自動化とスケーリングを進めることで、大規模な計算資源を高品質なロボット学習データの生成基盤へと転換することを目指しています。
NVIDIAのロボティクスおよびエッジAIエコシステム責任者であるAmit Goel氏は、Physical AIへの移行には、固定的なプログラム型自動化から、人のように認識、判断、学習できるロボットへの転換が不可欠であると述べ、ユニバーサルロボットがNVIDIA Isaacのシミュレーション基盤を活用し、高精度なデータ取得と生成を可能にするスケーラブルな基盤を構築していることを評価しました。
Generalist AIによる実環境での性能実証
データ取得デモに加え、Generalist AIによるロボット基盤モデルの実演も行われました。2台のUR7eがスマートフォンのパッケージング作業を自律的に実行し、高い器用さ、協調動作、接触を伴う操作能力を実環境で示しました。

このデモは、大規模かつ高品質なトレーニングデータと最先端のモデルアーキテクチャの組み合わせにより、ラボを超えて実環境で動作可能なPhysical AIが実現できることを示しています。Generalist AIの共同創業者兼CEOであるPete Florence氏は、ユニバーサルロボットの信頼性の高い産業用プラットフォーム上での今回のデモが、物理世界における常識的な判断を実際の作業能力へと変換できることを示し、さまざまな産業での展開が可能になると述べています。
URのAnders Beck氏は、AIモデル学習およびデータ取得の先進的な企業にURの技術が採用されていることは、ユニバーサルロボットがPhysical AI分野におけるプラットフォームとして選ばれている理由を示していると述べています。
URのAnders Beck氏は、GTCのパネルセッション「Beyond the Workcell: Scaling Robotics Workflows Across the Factory Floor」(3月18日(水)11:00〜)にも登壇しました。
ユニバーサルロボットについて
ユニバーサルロボット(UR)は、協働ロボットのパイオニアであり、リーディングカンパニーです。2008年に世界初の商用協働ロボットを発表して以来、直感的な操作性を備えた独自ソフトウェアPolyScopeの進化や、製品ポートフォリオの拡充を通じて、協働ロボットの可能性を広げてきました。URは現在、米Teradyne Inc.傘下の企業として、デンマーク・オーデンセに本社を構え、日本を含む世界20カ国に拠点を展開。これまでに世界50カ国以上で累計10万台を超える協働ロボットを販売しています。www.universal-robots.com/ja/
Scale AIについて
Scale AIは、重要な意思決定を支える信頼性の高いAIの実現をミッションとしています。AIモデルを支える高品質データの提供に加え、企業や政府によるAIアプリケーションの構築、導入、運用を支援しています。2016年設立、本社はサンフランシスコです。www.scale.com



コメント