導入の背景
契約件数が100万件を突破した三井ダイレクト損保では、月間総接点数が約8万〜9万件にのぼり、そのうち約65%が電話チャネルを占めています。同社が電話応対体制の強化を急いだ背景には、セキュリティ強化に伴う問い合わせの急増がありました。
2024年7月のウェブサイトリニューアルによるパスワード要件変更時、ログインに関する問い合わせは2〜3倍に急増しました。さらに、2026年9月に予定されている二段階認証(2FA)の本格導入により、入電数のさらなる増加が見込まれていました。当時のログイン関連の問い合わせは月約5,000件に達し、1件あたりの平均応対時間は10分に及んでいました。
また、ログインに関する問い合わせの顧客層は平均年齢が61歳、最頻値が72歳と高齢であるため、スマートフォンの操作に不慣れな顧客にとって電話は安心できる相談手段であり、丁寧な案内が求められるほど1通話あたりの応対時間が長くなる傾向がありました。
これらの課題を解決するため、三井ダイレクト損保はカラクリのボイスエージェント導入を決定。電話チャネルの混雑を緩和しつつ、チャットボットやSMSなどノンボイス対応を含めたハイブリッド化を進め、誰もが快適に利用できる新たな応対インフラの構築を目指しています。
ボイスエージェントの活用方法と特長
「KARAKURI voice agent」は、三井ダイレクト損保のマイページへのログインに関する電話問い合わせに対し、24時間365日のサポートチャネルとして稼働しています。AIが顧客の状況をヒアリングしながら、必要な設定方法や操作手順をステップごとに案内します。
ハルシネーションリスクの低減
保険業界では、AIが誤った契約情報や手続き手順を案内することが顧客トラブルや規制リスクに直結する可能性があります。カラクリのRAG(検索拡張生成)アーキテクチャは、三井ダイレクト損保が「KARAKURI chatbot」の運用を通じて長年整備してきたデータをナレッジソースとして参照し、回答を生成します。これにより、回答範囲が確認済みの社内情報に限定されるため、誤情報を音声で案内するハルシネーションリスクを構造的に低く抑えることが可能です。
音声品質の滑らかさ
カラクリのボイスエージェントが採用するspeech to speech方式は、テキスト変換を介さずに音声で直接入出力を処理します。従来のシナリオ型ボイスボットは対応範囲が限定的で、自然な会話や途中発話への対応に課題がありました。本ソリューションは顧客の発話を文脈ごと把握し、途中で「ちょっと待って」と言えば待機し、話が脱線しても会話の流れを自然に戻すリカバリー能力を持つことで、「人間らしい」対話品質を担保しています。
KARAKURI voice agentの詳細については、以下のリンクをご覧ください。
https://karakuri.ai/service/cs
ボイスエージェントの初期効果
2026年4月の本番稼働から約2ヶ月(2026年5月現在)の実績として、営業時間外(18時以降)における問い合わせの解決率は52.7%に達しています。これまで夜間・休日のログイン問い合わせに対しては「ただいま営業時間外です」としか伝えられなかった状況から、自己解決の機会が提供されるようになりました。
全時間帯の自動解決率は目標(60〜70%)に向けて改善過程にあるものの、稼働以降の顧客からの苦情は0件を維持しています。60〜70代の顧客層においても拒否反応は少なく、AIとの会話を最後まで完了するユーザーが継続して確認されています。2026年5月からはAIへの動線をさらに拡大しており、今後の指標改善が見込まれます。
三井ダイレクト損害保険株式会社 お客さまセンター部 品質・業務グループ グループマネージャーの和田 英典氏は、導入の決め手として、音声の滑らかさ、ハルシネーションリスクの低さ、そして長年の関係による業務説明の不要さを挙げています。また、高齢の顧客でも違和感なく会話していることから、苦情が0件であることに驚きを示し、「カスタマーサポートにAIを導入する際に顧客体験を下げては意味がない——品質がそこまで到達しているからこそ踏み切れた」とコメントしています。2026年9月の二段階認証導入という大きな山が控えており、そこでいよいよ真価が問われると述べられています。
詳細インタビューは以下のリンクで確認できます。
https://karakuri.ai/case/mitsui-direct-voice-agent
カラクリ株式会社について
カラクリ株式会社は「Friendly Technology」をミッションに掲げ、カスタマーサポート領域に特化したAIスタートアップです。SBI証券、大和証券、星野リゾートをはじめとする大手企業150社以上へ、KARAKURI chatbot/KARAKURI assist/GeN(Generative Navigator)/KARAKURI CXMなどの製品群を提供しています。また、経済産業省・NEDOのGENIAC第3期に採択され、AWS Trainiumを活用した国産LLM「KARAKURI LM」、ビジョン・ランゲージモデル「KARAKURI VL」の開発も進めています。
カラクリ株式会社のウェブサイトは以下のリンクをご覧ください。
https://about.karakuri.ai/



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