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キャシー松井氏が「Tech for Impact Summit 2026」に登壇、女性創業企業の評価と日本の未来を語る

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キャシー松井氏が「Tech for Impact Summit 2026」に登壇、女性創業企業の評価と日本の未来を語る

「ウーマノミクス」から「創業ノミクス」へ:日本の投資プレイブックを書き換える

2026年4月26日、ソーシャス株式会社が主催する招待制エグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」(T4IS2026)のメインステージにて、MPower Partners ゼネラルパートナーのキャシー松井氏が登壇しました。ニューヨーク・タイムズ東京特派員のリバー・アキラ・デービス氏とのファイヤーサイドセッションでは、「Womenomics to Founder-nomics: Rewriting Japan’s Investment Playbook(ウーマノミクスから創業ノミクスへ:日本の投資プレイブックを書き換える)」と題し、日本の女性活躍と投資の未来について議論が交わされました。

Tech for Impact Summit

ウーマノミクス25年の成果と課題

松井氏は、1999年にゴールドマン・サックスのストラテジストとして発表した「Womenomics(ウーマノミクス)」レポート以降の日本の変化を総括しました。日本の女性労働参加率は過去最高水準に達し、米国や欧州を上回る成果を上げています。しかし、民間・公的セクター双方の意思決定層における女性の割合は依然として低く、松井氏は「労働参加率という入口は開いたが、意思決定の部屋の扉は依然として閉じている」と指摘しました。政府が掲げた「指導的地位に占める女性の割合30%」目標が未達である現状を踏まえ、松井氏は「号令」ではなく「アカウンタビリティを伴う制度設計」の必要性を強調しました。

女性スピーカーがイベントで話す

クオータ制導入への強い主張

日本の衆議院の女性議員比率が約10%にとどまる現状に対し、松井氏は「最重要の意思決定機関が、国民の声を正しく反映できているとは、とても言えない」と述べ、クオータ制の導入を強く主張しました。韓国の政党レベルでのクオータ導入事例にも触れ、「クオータ制をやらなければ、この国でジェンダーパリティに近い水準に到達するまで、100年、150年待つことになる」と警鐘を鳴らしました。企業ガバナンスにおいても、政府目標だけでなく、経営トップ自身が「ハイポテンシャルな女性人材を能動的に育成する制度設計」を整備することの重要性を強調しました。

テック・フォー・インパクト・サミットに登壇する女性

高市早苗総理誕生の象徴的意味

日本初の女性総理大臣が誕生したことについて、松井氏は「若い女性や女の子が『自分が将来何になれるか』を思い描こうとしても、自分と似た姿の人がどこにも見当たらなければ、想像することすら難しい。見えないものには、なれない(You can only be what you can see)」と述べ、その象徴的意味の重要性を強調しました。また、高市氏が政治家家系の出身ではない点にも触れ、「日本の政治を骨の髄まで生きてきた祖父や親族がいなくても、リーダーになれる」というメッセージが、政治家を志すすべての人にとって意味を持つと語りました。

イベントで話す女性登壇者

女性ファウンダーへの投資:構造的ミスプライシング論

ベンチャー資金の女性ファウンダー向け配分が依然2〜3%にとどまる現状に対し、松井氏はMPower PartnersがBoston Consulting Group(BCG)と共同発表したリサーチ結果を提示しました。このリサーチによると、女性創業スタートアップのシード評価額は男性創業企業の半分以下であるものの、2020〜2024年の日本のIPO案件では、IPO時のバリュエーションが男性創業企業の1.5倍に達していることが明らかになりました。

松井氏は、この構造的原因として、女性ファウンダーが「相対的に保守的な事業計画」を、男性ファウンダーが「青空シナリオ的な大胆な事業計画」を提示する傾向の差を指摘しました。そして、この状況を「人権論」ではなく「投資ロジック」として捉え、「純粋な客観的投資家として見れば、有望なスタートアップにディスカウントで投資し、プレミアムで出口を取れる、なんて美味しい話だろうか?」と述べ、この市場の非効率性を指摘しました。

MPower Partnersは、最大規模80億円の「W-Power Fund」(正式名「WPower Fund I」、2025年3月設立、追加募集期間 2026年3月5日まで)を通じて、アーリーステージの女性ファウンダーに集中投資を行っています。出資者には東京都、三菱UFJ銀行、三菱地所、塩野義製薬、東京海上ホールディングスなどが名を連ねています。

Tech for Impact Summitでの講演

ESG/サステナビリティ投資の世界的潮流

世界のサステナビリティ関連AUM(運用資産)は2024年に約4.1兆ドルに成長し、前年比16.16%増を記録しました。松井氏は、米国で反ESGの見出しが注目される一方で、世界のESG資産の約85%は欧州に存在し、欧州とアジアがその成長を牽引している現状を指摘しました。また、ESG分析の意義を医師の比喩で説明し、財務データだけでなく非財務情報、特にスタートアップにおいては「S(社会)」、すなわち優秀な人材の採用と定着能力が重要であると述べました。

Tech for Impact Summitで講演する女性

日本のスタートアップエコシステム

日本のスタートアップ業界について、松井氏は以下の3つの点を挙げました。

  • タレントプールのシフト: 東京大学の学部生調査で40%が「起業したい/スタートアップで働きたい」と回答するなど、大企業からスタートアップへの人材シフトが進んでいます。

  • 政府の本格的な政策アジェンダ: 岸田政権以降、政府がスタートアップを政策アジェンダに置き、政策、税制、補助金による支援を強化しています。

  • 世界市場への視点の不足: 日本市場の規模が大きいため「Day Oneから世界市場」という発想が不足している点を課題として挙げ、海外人材を日本に呼び込む戦略の重要性を強調しました。

Asian University for Women(AUW)の活動

松井氏は、約20年にわたりライフワークとして関わってきたAsian University for Women(AUW)についても紹介しました。AUWは、アジア・中東出身で高等教育にアクセスできない女性を対象とした大学で、現在20カ国から約2,000名の学生が学んでいます。特にタリバン政権下のアフガニスタンや、ミャンマーのロヒンギャ難民の学生が多く在籍している現状を伝え、国際援助が縮小する中で、日本がアジアの安定を支える役割を果たすべきだと述べ、日本企業や財団からの支援を呼びかけました。

関連情報

ファイヤーサイド『Womenomics to Founder-nomics: Rewriting Japan’s Investment Playbook』全編は、Tech for Impact Summit 公式 YouTube チャンネルにて公開されています。

キャシー松井氏 プロフィール

MPower Partners ゼネラルパートナー。1994年にゴールドマン・サックス証券に入社し、2000年に同社初の女性パートナー兼チーフ・ジャパン株式ストラテジストに就任。1999年発表の「Womenomics」研究は、2015年に日本政府成長戦略に組み込まれました。ファーストリテイリング株式会社 社外取締役、京都大学大学院 経営管理研究科 非常勤教授などを務めています。

リバー・アキラ・デービス氏 プロフィール

ニューヨーク・タイムズ東京特派員。日本のビジネス・経済・社会を担当。2024年にNYTに移籍する前は、ウォール・ストリート・ジャーナル、Bloomberg Newsで日本報道に従事。東京を拠点に、自動車業界、貿易、政策、高齢化社会など幅広い領域で日本のビジネス・経済を取材しています。

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